地母神イシュタル

イシュタル【出身地:バビロニア】

 バビロニアの愛と豊穣と戦の大女神であり、主神である。名は「星」を意味する。天神アヌの娘であり、金星の神でもある。アッシリアでも崇拝されたが、好戦的な国ゆえ、ここでは特に戦争の女神として崇められた。メソポタミア最古の文明を築いたシュメールの大女神イナンナのバビロニア版であり、のちにアスタルテ、アフロディーテ、イシスなどに変容した。まさにオリエント地方に共通する豊穣の大母神なのである。

 イシュタルは自らを「慈愛豊かな聖娼」と呼び、「大女神ハル(娼婦たちの母)」とも呼ばれ、娼婦の守護神でもあった。バビロニアの王は毎年新年の初めに女神の神殿で女大司祭ハリーヌと性交儀礼を行ない、女神に選ばれた夫として、支配者としての認知を受けた。女神の神殿では巫女が聖娼として男たちと交わり、女神の恩恵を与えるものとして崇められた。バビロニアでは女性はみな結婚前に神殿で聖娼となる義務まであったほどである。しかしこうした淫行がユダヤ人を激怒させ、彼女は悪魔の一群に落とされ、アスタロトとなるのである。

地母神カーリー

カーリー【出身地:インド】

 ヒンドゥー教シヴァ神妃パールヴァティの変身した姿で、「黒い者」の意。血を好む殺戮の女神である。カーリー・マー(黒い母)とも呼ばれ、複数本の腕を持ち、首からは人間の髑髏をつないだ首飾りを下げている。幻惑的な衣装を身にまとい、青黒い肌には腕輪や足輪、真珠のネックレスといった高価な装飾品がきらめき、切断された腕を並べたスカートで腰を覆っている。顔は真っ黒で、宝冠に飾られた黒髪は背を覆い、くるぶしまで流れており、シヴァの三日月で飾られている。血の味を確かめるがごとく舌は垂れ下がり、目は真っ赤に充血し、血に染まった恐ろしい姿である。

 大女神ドゥルガーがアスラたちと戦ったとき、敵を前にして怒り、黒くなった顔からカーリーは生まれた。流れた血から新たな自分の分身を造るアスラ、ラクタビージャと戦ったときなど、その血を吸い尽くして倒した。後世ドゥルガーがシヴァの妃となったため、カーリーもまたシヴァの妃とされるようになった。今日ではカーリーは独立した神としてドゥルガー以上の力を得ている。インド全体でポピュラーな人気だが、特に南部のベンガル地方で崇拝され、その中心都市であるカルカッタの名は、カーリー・ガート(カーリーの沐浴場)がなまったものである。

地母神キュベレ

キュベレ【出身地:トルコ】

 プリギュアの大地の化身である母神。前キリスト教時代のローマでも熱狂的な崇拝を受けた。

 キュベレはプリギュアの山々の山頂に祀られた女神で、両側にライオンを置いた玉座に座った姿や、ライオンの引く戦車に乗った姿でよく表される。彼女は野獣たちを支配する者でもあった。キュベレはギリシア神話にも入るが、同じ大地の女神レアーと同一視され、次第に融合された。

地母神ハリティー

ハリティー【出身地:インド】

 日本では鬼子母神として親しまれている安産・子育ての女神である。音を漢訳して謌梨帝母(カリテイモ)とも呼ばれる。ヒンドゥーの富の神クベーラの妻、あるいはその母とされる。尽きることのない多産性の象徴であり、五百もの子悪魔に乳を与える。

 仏教説話では、これらの子を養うために国中の子を盗んで我が子に食べさせ、人々を嘆き悲しませていたところ、釈迦が懲らしめに末子のプリヤンカラを隠してしまった。嘆き悲しんだハリティーが釈迦にこのことを問うと、誰の子であっても慈しまなければならないと諭され、自らの過ちを悟り、罪を悔い改めて仏に帰依した。その後、ハリティーは人の子の代わりにザクロを食べることにした。ザクロが人の肉の味がするという俗信はここからきている。東京の雑司ヶ谷、入谷の鬼子母神は有名である。母親はザクロを供え物として、安産や子供の無病息災を願うのである。

地母神キクリヒメ

キクリヒメ【出身地:日本】

 菊理姫。白山姫(しろやまひめ)という別名も持つ、白山の女神である。イザナミの言葉を取り次ぐ巫女が神格化された神である。

 イザナギとイザナミが黄泉の国で争ったさい、仲裁役として黄泉平坂に現れた。縁をつなぐという意味で、「ククリ」の名がついた。彼女は縁結びの女神であり、愛の女神でもある。元々キクリヒメは霊山でトランス状態に陥ることによって山の神や先祖の霊の言葉を伝える巫女であったと考えられる。古代朝鮮の山神信仰の影響も見られ、日本のシャーマニズムと融合して生まれた女神のようだ。