鬼女ランダ

ランダ【出身地:インドネシア】

 バリ島に伝わる最強の魔女。人に災厄をもたらす黒き寡婦である。善人にとってランダは恐ろしい殺戮者であり、醜い老婆であるが、黒魔術を志す者にとって、ランダは絶大なパワーと究極の美を兼ね備えた妖艶な美少女である。誰もが彼女に認められ、一夜を共にすることを夢見るのだ。

 ランダはどんな姿にも化けることができ、人に呪いをかけて病気にしたり、病魔を取り憑かせたりするといった悪事を働く。同じくバリ島に伝わる神獣バロンと対になっていて、天敵同士である。善を象徴するバロンに対して悪の象徴となっているが、ランダは単にバロンに打ち倒されるべき存在ではない。というのもバリ=ヒンドゥーでは、善悪が共にある状態こそが完全なものとされているためだ。ランダは倒されてもすかさず別の存在に転生し、物語は同じパターンでループし始める。こうした輪廻の輪の中で、バロンとランダは永遠に決着のつかない戦いを続ける。

鬼女ボルボ

ボルボ【出身地:ギリシア】

 魔女術はヨーロッパに広く信仰されていた、地母神信仰の生き残った形である。地母神の多くは流血を好んでいたので、生贄はつきものであった。また豊穣祈願の儀式ではセックスそのものが大地の恵みを育むと考えられていたので、大いにおこなわれた。ボルボはこうした地母神信仰の名残の女神である。

 彼女は月の神であり、彼女の子宮は冥府そのものである。ギリシアでこうした役割を担っていたのがヘカーテであったので、両者が併合されたボルボ=ヘカーテの名で呼ばれる。血を求める狂暴な地母神であると同時に、何もかも包み込む愛を併せ持つ性格である。魔女たちはこのような地母神崇拝者であり、ボルボは魔女たちの最高の女王だったのである。

鬼女カリアッハベーラ

カリアッハベーラ【出身地:スコットランド】

 スコットランド高地の冬の精霊。名の意味「青い婆さん」の通り、青白い顔に痩せ細った老婆の姿をしている。冬枯れの杖で打つと木々の葉は落ち、草は枯れ、新しい芽を出さなくなる。日差しを暗くし、雪を運び、大地を凍らせ、世界に冬をもたらすのだ。

 彼女は野生の動物の守護者でもある。猟師たちから護ろうとする。春になっても土を凍らせる杖を武器にして春と戦う。しかし本格的な春の訪れ、5月1日の五月祭によって春の祝いがおこなわれると、杖をヒイラギの木の下に投げ込んで、灰色の石に変身してしまうという。10月31日のハロウィンになるとカリアッハベーラは再び甦って、植物を枯らせて雪を降らせ、また世界を雪に染めるのだ。

鬼女ラミア

ラミア【出身地:リビア】

 上半身に美しい人間の女性の顔と胸を持ち、下半身が蛇の姿をした魔女。ギリシア神話においては元来美しいニンフで、ゼウスの愛人であったが、ゼウスの妻ヘラの嫉妬を受けて呪いをかけられた。

 ゼウスとの間にできた子供全員を殺された上、死んだ子供しか産めないようになったラミアは、ついに気がふれてしまい、他人の子供をさらって喰い殺すようになった。このため神々によって蛇の怪物に変身させられたという。こうなってからは子供を殺すだけでなく、若い男をその上半身の美しさでたぶらかして喰い殺すようになった。夢魔となって若い男の精気を吸ったり、命を奪ったりもする。

 聖書においてはアダムの最初の妻だった魔女リリスの変化した姿とされ、エヴァに禁断の果実を食べるようにそそのかした蛇であったとも言われている。元来は砂漠の国スキタイ(リビア)の戦いの女神であったとされる。

鬼女リャナンシー

リャナンシー【出身地:アイルランド】

 人間の女性に似た姿で現れる妖精。人間の男の愛を探し求めているといわれる。

 リャナンシーという名は「妖精の恋人」という意味を持つ。彼女は愛を受け入れた男に取りつき、そのそばを離れない。彼女の恐ろしい所は、恋人となった男の生命を吸い取って生きている点である。生命を吸い取る代わりに、リャナンシーはその恋人に霊感を与えるという。ケルトの詩人たちはリャナンシーの恋人だといわれた。